【  ク ロ ス † ブ レ イ ク  】  























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夜の帳が下りてから、幾ばくか時がたった。

時が経つにつれ窓の外を彩る闇は、深く暗く重く・・・一層その濃さを増してゆく。

もう町のほとんどの家の住人は寝静まってしまっただろう・・・辺りは虫の声さえ聞こえぬほどの静寂に包まれていた。

「やはり・・・決心は揺らがないのかい?」

その問いに彼女が顔を上げると眼前にその男はいた。身体をソファにの背に深く持たせかけ、頭を深くたれ、身体の前に組まれた指には力が篭っているのか、筋張り、血の気が失せている。憔悴の色が深く感じ取れるそれに、心苦しいと思いはしたけれど、彼女の中の答えは決まっていた。

「ごめんなさい・・・」

と、呟き頭を下げる。

「・・・あなたがずっと私に好意を抱いてくれていることは知っていました。その気持ちをとても嬉しく思っています・・・。・・・だけれど、私にはもっと大切にしてあげたい人がいます。その人とは、決して結ばれることはありませんが・・・それでも、今のその人とのささやかな生活が私にとって何にもかえがたいものなのです。だから・・・だから・・・・」

だから、あなたの誘いに答えることは出来ないと・・・。男からは「そうか」とだけで、それ以上その人の感情の機微は伝わらない。

どのぐらいそうしていただろう。男が「わかった・・・」と小さく呟いた。

「・・・君の気持ちは十分にわかったよ。君の事を本当に愛していたんだ。その気持ちは、これからもずっと色褪せることはないだろうけれど、君の幸せを遠くから祈っているよ」

寂しげに笑んだ彼の表情は尚も悲しみをたたえているようではあったが、どこか晴れ晴れとした感を抱く。

そして男は立ち上がると何処かへ行き、再び彼女の前に戻ってきたときには、その両手には湯気の立つマグカップが二つ握られていた。その一つを差し出され、彼女は両手でそれを受け取った。

「ホットミルクだよ。飲むと落ち着くから。・・・最後にこの一杯だけでも一緒に飲んでくれるかい?」

暖かな香りと温もりを感じ、ホッと息をつくことが出来た。気づかないうちに緊張していたのだろう、ひどく彼女は安心した。

「ええ。・・・いただきます」

彼に微笑みかけ、そっとカップに唇をよせる。

暖かな液体が口を、のど元を通り、胃の府に落ちる。その間、その瞬を余すことなく眺める男の目。それは、酷く冷然としていることに彼女は気づかなかった。

ふと、ぐにゃりと歪んだ視界。

どくん、どくんと脈打つ鼓動に合わせて痛む頭を抱えて、彼女は持っていたカップを落とし、自らもまたその場に倒れこむ。

徐々に失われてゆく意識の片隅で最後に見たものは、嘲りを含んだ男の微笑みと男の背後の壁に映し出された歪に歪んでいる影。

(・・・あれは・・・な、に・・・?)

その影の正体を知るより前に、彼女の瞼は閉じてしまう。

「・・・愛おしいマリア、永遠なる安らぎを君に贈ろう」

その声は、彼女の耳に最期まで届くことはなかった。



















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<コメント:またもや連載っぽい小説を書こうとしているあたりが無謀ではないかと思うのですが、やはり、こう・・・書きたいと思えるうちに書いてしまうことのほうが大切なようにも思えます。

そうやって自分に言い訳をつけてはネタを書き出ししているあたりが救いようがないのだと冷静な自分が頭の隅のほうで言っているわけです。




このクロス†ブレイクは、私が大学2回生の折に、初めて描いた漫画なんです。

そのときにはタイトルを【狩人(イエーガー)】(→ネーミングセンスがないのはご愛嬌ということで≪汗≫)としていたのですが、流石に未熟な作品をサイトにUPすることは憚られ、結局小説として書き直しはじめたのがこれなんです。

一応、漫画として一話分の完結はみているのですが、当分、続きの期待できないものかもしれません。

そんなわけではありますが、読んでくださる方がいらっしゃるならば、幸いです。>