【innocent noise (イノセント・ノイズ)】
































何がどうなって、こうなったのか・・・。


果たしてそれを明確に説明できる人間が、今この場を探しているだろうか。


皆一様に今起こった出来事について、まるで白昼夢でも見ているかのように呆然としている。


誰しもがその光景に目を疑い、慄然とした。











その日、世界の8割の人間が死んだ。


否、『死んだ』と言うには些か語弊があるだろう。実際命を本当に喪ったのは数百人。世界規模でみれば、1割にも満たない程度だった。残りの7割強の人間達は、その日、その時間、自分達は『人』ではなく『自動機械人形』であったのだと知ることとなった。


誰もが慄然としただろう。


自らに爆風で吹き飛ばされた腕や足を傷みに耐えながら見遣れば、その傷口から吹き出たものは血ではなくオイル。転がった腕や足の肉の中から折れ突き出していたのは、骨ではなく細い鉄のパイプ。


腹を割くように切れた傷口から見えたのは赤や青の血管ではなく、それに類似して見えた半透明のチューブ。


老若男女問わず、今まで人として生を受け歩いてきた人生そのものをその日その時間から否定されたのだ。


人であろうと、自動機械人形であろうと、その様に発狂した。


分からない話ではない。それが自分の身に降りかかったとしたら、誰しも平静になどおれはしないだろう。














その残酷な死の宣言が行なわれたのは、世界暦3821年2月24日、午後2時38分46秒。


『死の宣言』として後に称されることとなった『Death Proclamation』は、その日その時間をもって勃発し、終結した。

























これから私が語る話を聞いて欲しい。些か、あなた方には残酷な話かもしれないが・・・それでも、聞いてもらわなければならないのだ。これから語る話は全て、未来に起こった真実の出来事なのであるから。その真実から目をそらしてはならない。その事実から逃げてはならない。もし、同じ運命を辿りたくないのなら。


そして、私が語ったこの話を信じてくれるのなら、これをあなたに託そう。


あの絶望に暮れた世界の全てを知る一人の人間として、この手記を残そう。


ここには、その世界の欠片たちの生が綴られている。


それを見て、知って、考えてもらいたい。


そして、気づいて欲しい。


それは、これが後に始まる壮絶なる戦い『innocent noise』の序章に過ぎない、ということを。


これがあの世界を生き、知った、最期に私が伝えられることの全てである。

















<コメント:これ、本当は、長編・連載小説として、前々から考えていたやつなんですが、真剣に一つ一つの設定を一から組みなおして書こうと思い直し、まだ私のパソのネタ箱に温存されたままのやつなんです。今回は、少しフライング気味に短編・・・にも満たない小話的な話として、ちょっとばかり書いてみました。書いていて自分で謎だ!とか思っているので、作品として完成するのはいつになることやら・・・ですね(苦笑)>